タイガの森サポーターの方、よびかけ人の方、ちょっと寄って下さったビジターの方、こんにちは、
映画でこんな台詞を聞いたとき、タイガの森とウデヘの人達が思い浮かびました。
?どこかにずっと住めば、自分もその場所になると思うんだ?
(I think if you live some place long enough, you are that place.)※
タイガの森やビキンという場所を知るために、タイガと生きている人達の声を聴いてみるのはどうでしょう?
人を通じてタイガと出会う 「FACES, VOICES, SPIRIT」、
今回登場するのは猟師のヤコフ・カンチュガさん (写真のお父さん、63歳)、
ビキン川を訪ねるツアーの案内役としても活躍するヤコフさんが、少年時代の思い出、生きものや猟のこと、タイガのこと、息子さんの買ってきたDVDで映画 『アバター』 を観て思ったことを話してくれました。3回に分け掲載していく予定です。
話していたら胸がカーッとなりました。同じ時代を生きている人です。
飄々とした彼の受け答えの中に、この土地の厳しさや豊かさ、タイガと生きる人間の心意気を感じていただければ幸いです、
どうぞご覧下さい、(野口)
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2月23日、ロシア沿海地方 ビキン川のクラスニヤール村、午前9時 (冬の現地時間は日本時間+1h) 。天気は快晴、気温はマイナス22℃。風は微風、家の煙突の煙がまっすぐ昇っていました。この日はロシアの祝日 「祖国防衛者の日」。猟を終えてクラスニヤール村の自宅で過ごしていたヤコフ・カンチュガさん (63歳) に話を聞きました ─
― 去年の暮れ?タイガの森フォーラム?が発足しました。タイガという森やビキンという場所の存在を日本や世界の人達に知ってもらうことがまずはおっきな目標です
うむ、
― それで、いざウスリータイガのことやウデヘの暮らしのことを伝えようと思った途端、自分達はもっとここ (ビキン) の四季やクラスニヤール村の人達の一年の暮らしを知らねばならん、と気づきました。というわけでこれからもタイガのことやウデヘのことを教えて下さい、お願いします、
はっはは。それならここでわしらと住まんか。
? ええんですか、
ええぞ。
? まず、猟のことお訊きしますね。ヤコフさんはもう40年間猟をしていますけど、初めて?自分はもう鉄砲が撃てる?と思ったのは ?
7歳で犬に向かってぶっ放したときかな。
? 7歳で ?犬に向かって ?
ああ。畑のトウモロコシを守ろうとしてな。
? はあ、
そのころ小麦が高くてな、村では皆トウモロコシを育てとったんだ。そうすると犬がな、畑にトウモロコシを食べにくる。で、全部食っちまおうとするんだあいつら。それで、ぶっ放した。
? 7歳で、
そうだ。銃はリス撃ちに持っていくような小さなやつだった。じゃが薬莢に火薬は充分詰まっとってな。ぶっ放した途端、反動でうしろにひっくり返った。で、しばらく気を失っとったと思う。
? 弾は犬に当たったんですか ?
いや、外れた。地面に当たって、そこにでっかい穴があいた。それから大騒ぎになった。
? それって、家の手伝いというか、?これでおまえがトウモロコシを守るんだぞ?ってその鉄砲をわたされて見張りをしてたんですか?
いや、わしが勝手に鉄砲を持ち出したんだ、トウモロコシを守りたくてな。
? なるほど、、、でも、弾は ?
弾は、ばあちゃんが出してきてくれた。?おばあちゃん、てっぽうの弾をちょうだい、火薬を抜いて釣りのおもりにするから?って言ったら出してきてくれた。
? 撃ち方は ?
大人が撃つのを見てたからな。
? そのときお父さんは、、、お元気でした ?
ああ、どえらいで剣幕で叱られた。ズボンのベルトでしこたま尻をひっぱたかれた。
? お父さんも猟師だったんですか ?
いや。親父は猟を生業にはしとらんかった。
? じゃあヤコフさんはどういうふうに猟を覚えました ?
大人達とタイガへ行って、そばで見ながら覚えたよ。
?(そばにあった伯父さんの写真を見ながら)伯父さん達といっしょに ?
ああ。伯父さんもわしに猟を教えてくれた。
(台所にヤコフさんのしとめたアカシカのあばらがありました。そのあばらを見ながら)
? このイズューブル (アカシカ) は、雄 ? (← なんとなく)
ああ、雄だ。
? 150kgくらいの ? (← 目分量+なんとなく)
ああ。150kgくらいだ。
? 骨や毛皮も全部ひっくるめての150kgですよね ? 食べるとこだけじゃなくて
そうだ。全部ひっくるめて150kgくらいの雄だ。
? 何歳くらい ?
7歳じゃろう。
? 仕留めたのは昼 ? 夜 ?
昼だった。
? 最近 ?
ああ。こいつと会ったのは1月だ。
? 水辺にいました ? それとも森に ?
ビキン(川)の岸から近い森におった。
? 1頭でいました ? それとも群れを率いてました ?
1頭でおった。
? で、この雄は樹の皮を食べてたんでしょうか ?
いや。そのあたりの雪の下に、去年の秋落ちたクルミの実が埋まっとってな。それを掘り出して食ってたんだ、こいつは。
? どうやって見つけました ? 足あと ?
ああ。足あとを見つけて追っていった。そしたらこいつは食事しとった。
? 猟犬は ?
犬は連れていかん。もう わし自身が猟犬みたいなもんじゃからな(笑)。それにわしの猟をする辺りじゃ 犬をつないでおくと虎 (アムールトラ) が来て食っちまうんだ。
? なるほど。何メートルくらい手前から狙いました ?
70メートルくらい手前から。
― 何発で仕留めました ?
2発だ。やたらと弾をばらまくのは ?わしは好かんから。
― 仕留めたときはひとり ?
ああ。ひとりだった。
― 運ぶのは ?
(甥の) ヴォーバを呼んできてふたりで運んだ。
次回(Part 2)につづきます
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聞き手/インタビュアー 野口 栄一郎、『タイガの森フォーラム』/国際環境NGO FoE Japan
了解です。今週木曜(3月18日)に掲載予定の Part 2 に「アバター」を観たヤコフさんの話が入っています。どうぞお楽しみに。
ちなみに DVDで映画を観るのはロシアの人達の間でも既に日常的なことになっていて、この村(クラスニヤール村)でもそうなってきています。
ハバロフスクやウラジオストクの街ではあちこちでロシア映画やハリウッド映画のDVDが売られています。その中には合法的にリリースされている感じのものもあれば見るからに海賊版っていう感じのものもありますが、結構多いのが「これ、どっちやろ?」という出来具合のもの。
猟師ヤコフさんの家にあったのは、街で息子さんが買ってきたとおぼしきDVDで「2009年のベスト映画シリーズ」というようなタイトルがロシア語で記してあるものでした。
で、なんと1枚のディスクに10本の映画が入ってました。(← 絶対、画質が犠牲にされてると思います)
その中の1本が「アバター」で、ヤコフさんはそれを奥さんと仲良く観ていました。
それで よし、あとで感想を訊いてみようと思いました。
そのDVDのケースを見せてもらって「あっ、これはいい!」と思ったのは、ケース内側に「アバター」の傭兵を演じている女優さん(ミシェル・ロドリゲス)のスナップ写真が使われていたことです。「アバター」で最も男気を見せてくれたのは彼女だったと思うので。
ではヤコフさんのインタビューPart 2 をお楽しみに(野口)
ヤコフさん、「アバター」を見てどのような感想を持たれたか
非常に興味深いです。
更新楽しみにしております。
Posted by SIGMAX on 2010.03.15