タイガの旅からもどって約1か月が経ちました。ウデへの人々と過ごした8日間を振り返り、文章としてまとめようと思うのですが、うまく言葉になりません。なんだろう、この感覚。思い出そうとすると、何かやわらかい空気にゆるゆると包まれているような、甘いハチミツをなめているような、不思議な感覚がよみがえってくるばかりです。
あえて例えるならば、「親戚のおじさん家」。まだ小さい頃、夏休みに親戚一同が集まって一日を過ごしたあの感覚。久しぶりに会う歳の近いいとこ。最初は照れて話すのが恥ずかしかったのに少しずつうち解けていき、子ども同士で集まってかくれんぼをしたり、宝物をみせてもらったり。大人達は、料理を食べながらお酒を飲んで大きな声で話していたかと思うと、カラオケがはじまり、踊り出すおじさんもいたりして。あの時のあの感じ。
今回、日本からのツアーメンバーはガイドの方を含めて7名で、ウデへの人たちはヤコフ・アンナ夫妻をはじめ6名。そして、ハバロフスクからのロシア人通訳ガイドが1名。初めて会う人たちばかりでお互いの素性もよく知らず、ウデへの人たちとは言葉もほぼ通じ合っていないのに、妙に安心感があって、互いに変に気を遣い合うこともなくマイペースでリラックス。まるで「親戚一同」のような一体感を味わえたのは、同じモンゴロイドであることも大きいけれど、相手の存在をありのままに認め大切にするウデへの人々の気質が皆をおおらかな気持ちにさせ、全体的な居心地のよさを作り出していたからではないかと思います。
ウデへの人々の魅力は、飾らない優しさと仕事の美しさにもあらわれていると思いました。たちまちにして簡素なかまどを作り、事も無げに薪を割って火にくべるとお湯が沸く。船外機で川下から岸に近づき絶妙なスピードと角度でするりと着岸する。思い通りのポイントにヒュンッとルアーを放り、糸を巻き上げ魚を釣る。キャンプ料理とはいえ、鹿肉をていねいに煮込みおいしく味付けをして食べさせてくれる。無駄な動きや変な自慢はなく、自分の持っている力を出し惜しみせず当たり前のこととして提供してくれる。そんな中、ここで今私にできることは何だろうかと自然に考えさせられました。
ウデへの人々を育んできたタイガの森やビキン川は、どこか懐かしく懐の広さを感じさせる景色でした。生涯に一度は見ておきたいというような大絶景ではないかもしれないし、森に生きているというアムールトラや熊などの動物は足跡すら滅多に見られるものではない。釣りを楽しんだり、カヌーを満喫したりするなら世界にはもっと他の場所があるだろうし、夏場は嫌というほど蚊に刺されてかゆい。それでも、タイガの森や川やウデへの人々と過ごした時間は、何か私たちの古い記憶にじんわりと訴えてくるものがあり、また行きたくなる、また会いたくなる、そんな気持ちになりました。
そして、ウデへの人々に対しても、何か役に立てることはないだろうかと考えるようになりました。次に行く時は、エコツアーへの参加+αの具体的な活動をして、私も美しい仕事がさりげなくできたらいいなと思っています。
皆さん、ありがとう。またね。
(2010年ツアー参加者・ペンネームターニャ)