野生のアムールトラは幻の虎といわれ、その暮らし/生態はいまも謎に満ちている。ただ、冬の気温がマイナス30℃以下という厳寒地で群れず1頭づつ生きている肉食獣なので、その一生は決して長くはなく、平均寿命12年?15年という推定も。(体力が衰えて自力でシカやイノシシを獲れなくなることが即、餓えと死とを意味する。)だから、今回の寅年から次の寅年へ干支が一巡する12年間を生きるアムールトラもいるかもしれない。
これは2006年の1月、やはりビキン川のほとりで見つけたアムールトラの足あと。虎のほうからみれば虎の世界の端っこに人間がいるのかも。
寅年の2010年へむけて新聞各紙や雑誌が世界の虎のピンチや保護の記事・特集を組む気配。『タイガの森フォーラム』も情報や画像の提供で協力中。
<『タイガの森フォーラム』で協力している記事や特集の掲載見通し>
■毎日新聞 12/29 朝刊に記事掲載の見通し
■読売新聞 大晦日?新年のどこかで世界の虎の危機を伝える記事として掲載の可能性
■誠文堂新光社『子供の科学』2月号(1月10日発売)にアムールトラの特集記事掲載予定
この記事や特集を読みながら、北の方角にあるタイガの森やそこで生きている虎の存在や気配(※)を感じてくれる人が現れたらタイガの保護も一歩前進。タイガの木材をロシアから輸入して使っている日本は、タイガの将来に対してもちょっぴり影響力を持っているから。
2010年は、干支にもちなんで「世界トラ(保護)サミット」が開催されるとの情報が。11月12日付「Moscow Times」の報道によればこのサミットの目的は世界の野生の虎の減少をストップして西暦2022年(次の寅年)までに現在の倍の6,500頭まで増大させることで、プーチン露首相・ロシア連邦天然資源省と世界銀行・WWFロシアが協力して世界13か国(野生の虎の生息しているアジアの国々)に参加を呼びかけ、2010年9月にロシア極東のウラジオストク市で開催予定とのこと。
このサミットが実現すれば2010年の寅年から2022年の寅年までの12年間、ロシアの政府や専門家・NGOが世界の虎保護の推進役になるかもしれない。
これは2008年のロシアの新聞の記事。見出しは「プーチン首相、虎を贈られる」。贈られた子虎は動物園生まれのアムールトラのよう。プーチン首相と奥さんがしばらく世話をしたあと動物園へ移されるらしい。
そして2010年10月には「生物多様性条約第10回締約国会議」(COP10)が名古屋で開催される。
それは、ビキン川流域をはじめいまロシア沿海地方に残っているウスリータイガの世界を私達人間がもうこれ以上こわさないこと。これが長期的にいちばん重要。チョウセンゴヨウ(ケドゥル/紅松)やエゾマツとモンゴリナラやマンシュウグルミの樹があってイノシシやアムールトラのいるこのウスリータイガ(Ussuri taiga)の生態系をこわさず(※)未来に残すこと。その上で野生動物の密猟や密輸の抑制が常に必要。
そしてそのためにウスリータイガの世界(※)に目をむけよう。ロシアの人々やウデヘの人々と話し合って連携しよう。ロシアや世界の国々から木材を輸入して使っている日本の私達が木材を買ったり使ったりするときは “フェアな木材” ?を選ぶようにしよう(※)。こう考えて『タイガの森フォーラム』のNGOや企業はロシアの人々や「タイガの森サポーター」のみなさん、研究者の方やほかのNGOさん、メディアの人々と力を合わせたいです。
虎は、タイガの伐採で追いつめられても人間の言葉で怒ったりピンチを説明したりはしてくれない。けれど彼らの存在や彼らのピンチこそが私達人間への無言のメッセージ。そのメッセージが、あなたやほかの人、そしてタイガの森の伐採や保護を決める立場の人達に届くかどうか ? それが2010年という年が虎や人間にとってどんな年になるかを決めるだろう。
2010年はロシアの専門家・NGOの声を聴いてみよう。ロシアの政府やプーチン首相がウスリータイガをどうやって守ろうと提案するか注目していこう。そして『タイガの森フォーラム』や「タイガの森サポーター」のみなさんはアムールトラやウスリータイガのためにどんなアクションを起こすことができるか?というわけで2010年は、タイガだよ全員集合 (ちょっと早いかな?)
これはビキン川のクラスニヤール村の運動会。25kgの鉄球を連続で頭上まで持ち上げられた回数を競うこの競技を戦っているのは、もと村イチの暴れん坊でいまは村の学校の体育教師をしているヤコフ・カンチュガ(このとき彼は51回上げて2位)。彼が最も尊敬する人物は父親で猟師のヤコフさん(親子で同じ名前)。曰く、「俺のリーダーは親父だった。親父はタイガで何でもできる」
2010年は「タイガの森サポーター」になってくださったみなさんと彼ら森の人ウデヘが知り合う年になるかもしれない。ウデヘの人達との出会いに、これから人間が森やトラと共存していける希望が見つかると『タイガの森フォーラム』のNGOや企業は考えている。先日の『タイガの森フォーラム』発足記念シンポジウムでロディオンさんの話を聴いてそう思われた方もきっといらしたと思う。
ではよいお正月を(^-^) ? ?コメントや Eメール(info@taigaforum.jp)もお気軽に。
◆福音館書店 月刊「かがくのとも」490号『とら ? きたぐにのもりにいきる』/田中 豊美 作/390円+税
◆東洋書店 ユーラシア・ブックレットNo.144『アムールトラに魅せられて』?極東の自然・環境・人間?/関 啓子著/600円+税
そうそう、FoE Japan サイトの「アムールトラねっと」もお待ちしています。
(野口 栄一郎)