見ることが、守ること ?
今日もロシア沿海地方の大地を力強く流れている川、ビキン。
このコーナー 「For Your Eyes Only ? 村人・旅人の見たビキンの生物多様性と暮らし」 では毎回地元の人達や旅人・スタッフの撮影したスナップ写真を交えてビキン川流域の四季の自然や生物多様性、暮らしを見ていこうと思います。
この場所の自然の価値はまだまだ知られていません。この場所を知る人が少しづつ増えていくこと、それがこの場所を守る力を生み出します。見ることが、守ること。
第4回はこの1枚、
ハリウス (カワヒメマス) は白身の川魚で、「やっぱりビキン川で一番美味しいのはこの魚だよね」 という人もいます。海に降らずこの川で生涯を過ごすサケ科の魚で、ビキン川中流域でよく釣れるのは体長20センチくらいのもの。太陽の光を反射して青や緑に輝くウロコや、並行四辺形の背びれが特徴です。
北米の川では彼らの仲間はグレイリング、アークティック・グレイリングとよばれていて、もうすこし大きくなります。(両方食べたことのある人は、めったにいないかもしれません)
ビキンで暮らすウデヘの人々の食生活を見ていると、このハリウスをはじめとする川魚はとても大切です。ウデヘの人々は今もタイガで狩るシカやイノシシを食べることができ、村の家々ではジャガイモやトウモロコシ、キャベツ、トマト、キュウリなどを育て、街から買うパンやお米も食卓にのぼっていますが、このハリウスやレノック (コクチマス) などの魚は最も安定して確保できるタンパク源です。
料理の仕方は煮たりスープにしたりすることが多いですが、この写真のハリウスはホイル焼きされて香草が乗っていて、とても美味しかった。
これまで、ビキンのタイガの伐採される可能性が浮上するたび、ビキンのウデヘの人々は男性も女性もお年寄りも若者も声をあげてタイガを伐採から守ってきました。それは、20世紀にタイガの開発の進んだ別の地域で、伐採の影響で猟の獲物や川魚が減ってしまい、故郷を離れざるを得なくなった同胞の人々のことを、皆知っているからです。
クラスニヤール村 (ビキン川) のお婆ちゃんがお祭りで歌っているのを聞いたことがあります。決まった拍子と節回しに合わせて即興で歌うもので、そのお婆ちゃん (スン・ポリーナさん) は?魚がちゃんととれるから、ここでウデヘは生きられる?と歌いました。
撮影者 ?: ?野口 栄一郎
撮影時期 ?: ?2008年10月4日
撮影地 ?: ?ビキン川のクラスニヤール村 (ロシア沿海地方ポジャールスキー地区)
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「For Your Eyes Only ? 村人・旅人の見たビキンの生物多様性と暮らし」 は平成21年度の公益信託地球環境日本基金の助成を得て FoE Japan ?の開始したプロジェクト 「住民による写真とメッセージで守るロシア沿海地方ウスリータイガの生物多様性」 の成果を発表していきます