タイガの森サポーターの方、ちょっと寄ってくださったビジターの方、お元気ですか、
人を通じてタイガと出会う 「FACES, VOICES, SPIRIT」、
今週は猟師 ヤコフ・カンチュガさん (写真のお父さん、63歳) のインタビュー Part 3 をどうぞ。
(Part 1, Part 2 からこぼれた話や数日後の話から拾ってお送りします。)
※ Part 1 からご覧になる方は、こちらをクリックしてどうぞ ⇒ Part 1 へ
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― ヤコフさん ウデヘ語は ?
ああ、少しはな。アカシカは 「キャガー(※1)」。朝鮮五葉松は 「クンカー」 だ。
わしらの世代だと、聞けばわかるが話すのはしんどい。前の世代まではウデヘ語で生活しとったが。
― では、ヤコフさんの好きなウデヘ語の言葉は ?
「アラグディガー」 だな。「美しい」 という意味のウデヘ語だ。
「アラグディガー・ハタラー」 は 「美しいお嬢さん」 だ。
― ほんとだ ・・・ 響きもいい、
そういえば、若い娘さん達ってどうしてあんなに美しいんだと思います ?
それは若いからじゃ。
― ・・・ というか、いったいどうしてあんなにも美しくなる必要があるのかな ? って、
そりゃあやっぱり、愛されるように、じゃろう。
― やっぱりそうか、
じゃあ、たとえばヤコフさんや僕がイノシシだったとしますね ?
そしたら僕らはお嬢さんイノシシ達を見て 「この子は美しい、この子は違う、」 なんて考えてますか ?
いいや。命のあるものはどれも美しいぞ。
それにな、イノシシや虎だけじゃない。人だってみんな美しいぞ。ただみんな気づかんだけでな。
― そう ?
あたりまえだ。神さんは誰のことだって愛しとる。あとは、それに気づくかどうかわしら次第だ。
もっとも、神さんっちゅうのもわしら人間の考え出すものかもしれんが。
― ん ?? すると神様って、どこに ?
自分の中に、おるんだろうな。
おまえにも、魂があるじゃろ。そこにおるんじゃろう。
― ああ、ここか。 ・・・ では虎はどうです ? 虎には魂がありますか?
あるだろうな。あいつらには魂がある。
― ということは虎にも神様がいますか ?
いや、虎には神さんはおらんのじゃないかな。
虎は、神さんというものを特に考えたりせず、ただ生きとる気がする。
― すると ・・・ 神様っていうのは人の考えるもの、、、
かもしれん、
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? 今年のツアー (※2) は お客さんと来る時期を前か後ろにずらす可能性があります
ん? 何かあるのか ?今年
? 今年 (2010年) は9月にウラジオストクで世界虎サミット ?(※3) というのがあって、僕らも出張っていく可能性があります。その場合は例年のツアーの時期と重なります。
でもビキンへ来たいと言って下さるお客さんもいますし、何らかの形で応えたいです
じゃあ、おまえさん達もわしらも頑張って働かなきゃな。
― そうです。ツアーの有無や日程が決まったら村の役場や組合へ伝えます
ああ。ニホンの人達にもよろしく。わしらも楽しみにしとるぞ、ツアー。
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― このまえの本 (※4) 、ご覧になりました ?
ああ。ニホン語は読めないが、罠の写真や獲物の解体の写真がとてもおもしろかった。
おまえさん達の国にもシカやイノシシ、猟師がおるんだな。
? ええ、いますよ。あの本を書いた人は罠猟が専門らしいです。
ヤコフさんは罠も猟銃も使いますね ? いま猟に使っている銃は ?
カービン銃だ。
― その銃を選んだのは ?
他の猟銃と比べて軽いからだ。持ち運びが楽だ。
― 何年くらい使ってます ?
もう7年になる。
― あと何年くらい働いてくれそうですか ?
6?7年はいけるかな。
― 古くなってくると銃はどうなりますか ?
撃った弾が同じ所に当たらなくなる。
― タイガでそのカービンはヤコフさんの同僚のようなものですか ?
そうだな。同僚、相棒ちゅうとこだろうな。
? その相棒は軽かったり重かったりしますか ?
ああ。猟の上手く行っとる日は軽いし、猟の上手く行っとらん日は重くなる。
― 日本の武将の話で似たのがあります。戦に負けた日の鎧は重い、と (※5)
ああ、それはわしもわかる気がする。
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? 今日もたくさん話をありがとうございましした、、、あ、
なんじゃ、
? もうひとつ訊きたかったことが。
ええと、イノシシを狙った弾が外れて、カンカンになったイノシシが突っ込んできたらどうしますか ?
そのときか。そのときは 樹に登るんじゃ、大急ぎでな。
? わかりました。ではまた来ます、
待っとるぞ。ニホンでもわしらのこと忘れるなよ、、、あ、
― どうしました ?
ヤーシャ (※6) かリョーハ (※7) の嫁になってくれるいい娘さんがいたら、紹介してくれ、
? 了解、
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3回に渡ってお送りしてきましたがこれで一応ひと区切り、
ビキンの猟師ヤコフ・カンチュガさんのインタビュー、いかがでしたか?
このビキンという場所、人口は少ないですがそれだけに逞しい人が何人も暮らしています。
この人 ヤコフさんもそこでごく普通に暮らしている人の一人ですが、それでもなおビキンでこの人と会う度、川で、山で、タイガで、村で、こんな頼もしく愉快な人と過ごせるのは最高だと感じます。
それから、この人をこの人にしたのはここの川やタイガだろう、という気がしてきます。
そして、この人にとってタイガはどんなものだろう?と想像しはじめます。
すると途端に、自分にはまだ解っていないことがたくさんあるのを感じます。
それでも、毎回そこ (どこ?) へ近づきたくなります。この人と見るタイガやビキン川が素晴らしい。そしてそう感じる人がこれからもっと現れるような気がします。
だからもしヤコフさんやビキンの人達に訊いてみたい事があったら、ためしに僕らへ知らせて下さい。伝えてみます。
そして、出来たらそんなふうに声をかけて下さった方とビキンへ行ってみたいです。
そうしたらまた、タイガで何かが生まれるかもしれません。
聞き手/インタビュアー 野口 栄一郎、『タイガの森フォーラム』/国際環境NGO FoE Japan