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夏のビキン。ビキン川には、野生動物達のやってくるこういう水辺が残っていてドキドキさせられます。
(撮影 クラスニヤール村の猟師でカメラが好きなリョーシャ・ゲオンカ)
タイガは不思議な森です。
私は15年ほど前、野生動物の生息地のための活動をしようと思って入ったNGOで、日本への木材輸出の盛んなロシア極東へ出動し「タイガ」とよばれる森と出会いました。アムールトラという虎のいるロシア沿海地方のタイガを歩いた私は「ああ俺は、ここで生きるトラになって、ここの土になる」と思いました。そして「森の人」という意味の名をもつ先住民族ウデヘの人達と会い、タイガで活動しながら、北方の自然の厳しさや人間の強さ、優しさを教わっています。
タイガは不思議な森で、ときどき人を招き寄せ自ら語りはじめます。タイガにいると私は affordable papers 、樹木だけでなく、たとえば足もとの落ち葉や土も(そこでは微生物達が働いています)そばで朽ちている倒木も(中には昆虫の幼虫が)木の実や花、虫も、自分の吸っている空気も、そこに足跡や気配を残している猪、熊、虎も、すこし離れたところで湧き出ている水も、小川も川も、すべてひっくるめたものがタイガなんだ!という静かな熱狂を感じます。そして「これは人間には作り出せない自然の傑作?タイガの世界?だ!」と有頂天になったりしますが、ふと、いまのは自分が考えたというより森が語ったんじゃないか?と思ったりします。
さて、そのタイガの森が最良の姿で残る場所のひとつが、日本列島のそば、ロシア沿海地方北部を流れているビキン川という川の流域です。このビキン川流域の自然をご覧になるときっと多くの方が驚かれるでしょう。いまから十年ほど前、ロシア連邦政府がユネスコ世界自然遺産へ推薦した場所であり、登録こそ保留されていますが、1万km2以上の広がりをもつみごとな森林地帯に世界的な絶滅危惧種のアムールトラやシマフクロウをふくむいきもの達が繁殖しているからです。
一方、危機の側面からみると、ビキン川流域をめぐる状況はここ数年、開発(森林伐採の可能性)と保護(世界遺産への再推薦の可能性など)とのあいだで揺れていて、これから数年間がこの森林地帯の将来を大きく左右するといわれています。
『タイガフォーラム』は、日本が長年ロシア極東のタイガの木を木材として輸入し利用してきた歴史をふまえ、森林生態系保全や生物多様性保護の観点からこのビキン川流域に強い関心をもったNGOと企業の発足させたフォーラムです。「タイガってどんなものだろう?」 と思うあなたや、ロシアのNGO、先住民の人達、研究者や責任ある立場の方々にご参加いただきながら、このフォーラムはビキンの森が未来の地球に残るためのアクションを叩き出し、実行します。易しいこととは思いませんが、いまこの瞬間もあたらしい希望が生まれました。それはこれを読んでくださったあなたの存在です。
ビキン川流域は、陸地にある野生動物達のすみかとしてはおそらく地球全体を見わたしてもとびきりの場所です。この、いきもの達の生まれてくる場所を守るため力を合わせましょう。
『タイガフォーラム』スタッフ
野口 栄一郎(タイガフォーラム)
写真:ビキン川のウリマ山でイノシシのぬた場を観察。左から、ツアーで日本から訪れたお客さん達、野口、ウデヘの猟師・ヤコフさん(2007年9月)
2013.9.25改定