タイガの森フォーラム
Taiga Forum
Тайга Форум
2011.11.17
ハチと一緒に森を守る「ミツバチ大作戦」がスタート(その3)

タイガの森フォーラムで進めているプロジェクト「ミツバチ大作戦」に、専門家として参加・協力いただいている銀座ミツバチプロジェクトの高安和夫さん、田中淳夫さん、田中章仁さん、そして養蜂家の藤原誠太さんの4人がビキン川のクラスニヤール村を訪ね、村での養蜂の様子を視察した訪問記「タイガの森にすむミツバチからのメッセージ」を書いていただきました。その後編をお届けします(前編はこちらから

「タイガの森にすむミツバチからのメッセージ」(後編)

<極東ロシアで東洋ミツバチ発見>

東洋ミツバチの自然巣を手にする銀座ミツバチプロジェクトの高安和夫さんと田中淳夫さん

東洋ミツバチの自然巣を手にする銀座ミツバチプロジェクトの高安和夫さんと田中淳夫さん

アルカディーさんに「野生の東洋ミツバチはいるか?」とわれわれの一番の関心事を訪ねました。すると「いるよ!分封した野生のハチが巣を作っている。見せてやるから自宅へ来い」と言うので、自宅にお邪魔しました。すると養蜂道具の倉庫に置いてあるリンゴ箱のような木箱に二つの群れが営巣していました。「よし、箱を開けて見てみよう」と、くん煙器を用意しようとしたアルカディーさんに、藤原先生が「東洋ミツバチには煙はダメ!かえって暴れるよ」と言うと、アルカディーさんは刺されるかもしれないと心配そうです。箱のふたをそっと開けると立派な東洋ミツバチの自然巣ができていました(写真)。また、ミツバチを捕まえ羽の脈を確認すると、西洋ミツバチのYの字に対し、東洋ミツバチ特有のHの字に広がる脈も確認できました。

東洋ミツバチの羽脈はH字をなす

東洋ミツバチの羽脈はH字をなす

これは大きな発見かもしれません。日本では野生の東洋ミツバチの北限は青森県です。それよりはるかに北、ロシア極東のタイガの森に東洋ミツバチが生息している事実を確認した日本の研究者はいないと思います。「東洋ミツバチの生息するタイガの森を守ろう! このキャンペーンを日本からも発信しよう!」その夜は、東洋ミツバチ発見の話題で盛り上がり、ウォッカも進みました。

さて、次の日はビキン川を船でさかのぼり、タイガの森を見に行きました。ティーグルから案内役として選ばれたのは、ベラルーシ出身のニコライ・ゴルノフ氏です。野生生物学を専攻したニコライさんは、チェルノブイリ原発事故後、危険を感じロシア極東に避難して、クラスニヤール村で仕事を見つけたそうです。以前は狩猟管理官をしていましたが、今は村の警察官で、森林ガイドもするそうです。

岸に船を付け、これがシナノキ、これがエゾウコギ、これがゴヨウマツで、この実をイノシシが食べに来る。イノシシがいる所にアムールトラもやって来る。こんな説明を受けながら森を歩きました。その時も盛り上がったのは野生の東洋ミツバチの話題です。「アジアーツカ(東洋種)は、この森にいる。およそ、2〜3kmおきに、木のほらなどに営巣している。木の上の方に巣を作ると木のぼりの上手なツキノワグマが巣を襲い、下の方に巣を作ると力の強いヒグマが木をなぎ倒して巣を襲う!」という話を聞きました。われわれは相当数の東洋ミツバチがこの森に営巣し、越冬している確信を持ちました。

タイガの森フォーラムの皆さんと連携して、「東洋ミツバチの北限、タイガの森を守ろう!」、こんなキャンペーンが展開できたらうれしいです。

(地球・人間環境フォーラム発行『グローバルネット』2011年10月号(2011年11月15日発行)連載「日本再生:農の力で日本を元気に!」第7回より)

なお、このプロジェクとは、はちみつを通じて日本の皆さんにロシア極東に残る原生の森を知っていただくのと同時に、木材伐採に代わるオルタナティブな森林利用方法、経済手段として養蜂に取り組もうとする現地の住民を後押しする活動として、経団連自然保護基金の助成金を受けているものです。ただ今、蜂蜜の輸入手続きを進めているところです。近いうちに皆さんにタイガの森のはちみつをお届けできると思います。(坂本有希/タイガの森フォーラム、地球・人間環境フォーラム)


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