タイガの森フォーラム
Taiga Forum
Тайга Форум
2011.11.15
ハチと一緒に森を守る「ミツバチ大作戦」がスタート(その2)

タイガの森フォーラムでは、はちみつを通じて日本の皆さんにロシア極東に残る原生の森を知っていただくのと同時に、木材伐採に代わるオルタナティブな森林利用方法、経済手段として養蜂に取り組もうとする現地の住民を後押しする活動として、「住民と取り組むビキン川流域の森林生態系保全?北緯46度?タイガの森をまもるミツバチ大作戦」を実施しています。この活動の一環として、銀座ミツバチプロジェクトに皆さんに現地を視察していただきました。その訪問記「タイガの森にすむミツバチからのメッセージ」を、銀座ミツバチプロジェクト理事長の高安和夫さんに書いていただきました。月刊環境情報誌『グローバルネット』での連載記事から転載します。

タイガの森にすむミツバチからのメッセージ(前編)

極東ロシアのタイガの森にすむミツバチの話を聞いた時、不思議な共感を覚えました。「地域の自然環境保全は地域だけの問題ではなく、都市生活者が関心を持ち活動に参加すべきだ。食べることで自然環境や農薬を使わないで、頑張っている生産者を応援しよう!」銀座ミツバチプロジェクトは、そのメッセージを都市養蜂から発信し、アクションを起こしました。タイガの森の栄養がアムール川を通してオホーツク海に流れ、豊かな日本の水産業を支えていることは知っていました。タイガの森の自然保護は他人事ではありません。

タイガの森フォーラムの野口栄一郎氏の案内で、養蜂家の藤原誠太氏、銀座ミツバチプロジェクトの高安和夫、田中淳夫、田中章仁の4名がビキン川流域のクラスニヤール村を訪れたのは9月12日でした。成田からハバロフスクへの2時間半のフライトを終えた後、迎えに来てくれた村の組合「ティーグル」スタッフの運転するランドクルーザーに揺られること5時間、夜中の2時近くにようやく目的地クラスニヤール村に着きました。まだ残暑厳しい日本から到着すると、まさかのために持参したダウンジャケットが初日から役立つほどの寒さです。ホストファミリーのタチアナさんの好意で、冷えた体をバーニャ(サウナ)で温めベッドに入りました。

<タイガの森のハチミツ>

さて、次の日は、まずティーグルのオフィスを訪問し、組合長のウラジミール・シルコ氏の歓迎を受けました。シルコ氏のお父さん、アルカディー・シルコ氏は村で一番の養蜂家です。息子さんのシルコ氏も養蜂には関心がありますが、自身は蜂毒アレルギーがあり養蜂は難しいということです。シルコ氏のティーグルの活動は、タイガの森の管理はもちろんのこと、狩猟や養蜂の管理、グリーンツーリズムのガイドなど幅広く、さらには村に電力を供給するディーゼル発電所も管理しています。まさにティーグルが村の暮らしを支えています。

早速ハチミツの試食です。タイガの森ではシナノキを中心にミツバチたちは蜜を集めます。また、今年は10年に1度といわれるエゾウコギのハチミツも収穫できたそうです。シナノキ、エゾウコギどちらも、満足のいく香りと味でした。今年はティーグルの養蜂場で約10tの収穫がありました。収穫はその年の天候に大きく左右され、多い年は20tにもなりますが、少ないと1tの年もあるそうです。

クラスニヤール村のアルカディーさんの養蜂所

クラスニヤール村のアルカディーさんの養蜂所

その日の午後は、待ちに待った養蜂場(写真)への訪問です。案内してくれたのは、シルコ氏の奥さん、ユリアさんでした。ユリアさんはモスクワで弁護士をしている才女で、森林伐採を推進する企業に対し、先住民族の権利を主張し、最前線で毅然と戦うそうです。そのユリアさんの運転で、アルカディー・シルコ氏の養蜂場を訪ねました。そこにいたのは、スロベニア原産のカーニオラン種の西洋ミツバチたちでした。見た目は日本ミツバチとほとんど同じ、黒のボディーに乳白色のラインが特徴です。ほんの少しだけ普段見ているミツバチより大きい気がしました。くん煙器を用意してもらい、網付きの帽子をかぶり、いよいよ巣箱を開けます。煙をかけて手前の巣枠を取り出すと黒光りするミツバチたちがたくさんいました。

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クラスニヤール村での養蜂は西洋ミツバチで行われている

早速、藤原先生がスケールを取り出し、巣穴の長さを測りました。やはり巣の直径が0.3〜2mm程度、日本の西洋ミツバチより大きいようです。また、ダニも確認しました。ダニ対策についてアルカディーさんに尋ねると「ダニはめったに出ない。出た時だけ薬を使う」とのこと。後に確認すると、日本で使用されている「アピバール」(商品名)と同等の物でした。実は私たちの今回の任務の一部は、ダニ対策の薬や抗生物質の使用の有無の確認です。タイガの森フォーラムがハチミツを輸入するための、専門家としてのアドバイスが役目です。アルカディーさんは巣箱を移動させず、同じ場所で飼っています。その場所は、ちょうどビキン川のほとりにあり、雪解け後、一番先に咲く水辺の草花から蜜を集めて少しずつ数を増やし、シナノキの花が咲く時期に一気に蜜を集めます。そして冬は養蜂場にある倉庫で越冬するそうです。

後編に続く)

(地球・人間環境フォーラム発行『グローバルネット』2011年10月号(2011年11月15日発行)連載「日本再生:農の力で日本を元気に!」第7回より)

銀座ミツバチプロジェクトのご厚意により、ドキュメンタリー映画「タイガからのメッセージ」の上映&トークをファームエイド銀座2011(2011年11月23日15:00-17:00)で行うことが決まりました。映画ダイジェスト版の上映にあわせて、東洋ミツバチの北限・タイガの森の様子を藤原さん、高安さん、田中さんを交えてタイガフォーラムのスタッフがお話しします。詳細はこちらから


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